環境レストラン:環境を味わう
「環境レストラン/環境レストランを核とした地方都市活性化の事例研究」の出版準備中です。SLOWMEDIA+東京大学大学院新領域創成科学研究科の日高仁とbuilding landscape+東北芸術工科大学プロダクトデザイン学科の西澤高男氏との共同研究。南陽市赤湯のブドウ畑のレストランプロジェクト(南陽市ウェブサイト記事、東北芸術工科大学のウェブサイト告知+報告)などの実施とそのリサーチ。平成21年度ユニオン造形文化財団助成研究。6月初旬発行予定。以下、内容の概要(研究の目的)です。また、基礎研究を「環境レストランを核とした地方都市活性化の研究」で公開中
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研究の目的
この本のタイトルでもある「環境レストラン」という言葉は、このリサーチをまとめるに当たってつくった造語です。環境指向のレストランは増加していますし、利用者の意識も環境や新鮮で質の高い食材、地元農家との連携に対してこれまで以上に強まってきています。ただし、そこで使われている「環境」という言葉は非常に広い意味をもっており、実はあまり物理的な周辺環境そのもの、「どんな空間で食事をするか?」という意味で使われていることは少ないのではないかと気づきました。そして、この気付きが「環境レストラン」という造語を作るきっかけになりました。環境志向のレストランは多くありますが、エコロジーやオーガニック、地産地消など食材の環境志向を強調するものがほとんどで、食環境の空間性や地域独自の環境資源との関係で論じたものを知りません。「眺めの良いレストラン」などというタイトルで雑誌などで取り上げられることはありますが、我々がここで考えたい環境は、単なる眺望を示すものでもありません。
周辺環境を楽しみながら食事をすることができるレストラン、眺望だけでなく、レストランの建築空間やさらに広い周辺地域の環境、風土に根ざした食材や文化的交流、それらを一体的に楽しむことを目的としたレストラン。これがわれわれの考える「環境レストラン」です。
グリーンツーリズムやアグリツーリズムは世界各地で行われている興味深い動向で、我々のリサーチもそうした事例に目を向けています。イタリアのアグリツーリスモは世界的に大きな影響力を持っていますし、台湾の茶芸館は風土と独自の文化に支えられて人々の日常に入り込んでいます。
研究の目的として、最終的には、周辺地域や地方自治体、多くのメディアも巻き込んでこうした統合的な動きを作ることが重要だと考えていますが、例えばレストランを開業したいと考えている個人でもすぐに始められるアクション・プランとして、あるいは小さな町の活性化のために遊休農地を利用して始める地元レストランのためのアイディアとして「環境レストラン」は小さな規模からスタートできる、より具体的で身近なアイディアです。
現在、地方都市の衰退や過疎、農業従事者の高齢化や耕作放棄地の問題などが注目されています。実際にリサーチを行うと、こうした現実の困難は強く実感できます。しかし、一方で、そこにしかない素晴らしい環境をどうしてもっと生かし、独自の地域資源として開発していくことができないのかと疑問を感じるケースも多くありました。政府は観光立国などの立案もしていますが、具体的な政策としては明示されていません。観光資源の開発は急務ですが、これから必要なのは、俄かにつくられるマスコットキャラクターや名所看板、テーマパークや大規模な施設開発などではないはずです。「環境レストラン」はそこにしかない素晴らしい環境を食とともに味わうことができる場所であり、その土地でしかできない体験を提供します。「環境レストラン」で食事をすることはその地を訪れる主目的にもなりうるものであり、その意味では単なる一軒のレストランにとどまらない、地域活性化の拠点となります。さらに、オーベルジュのように宿泊とともにサービスを提供することでより経済波及効果の高いものとして発展させることもできるでしょう。
この研究の目的は、こうした「環境レストラン」の可能性についてリサーチを行い、日本の地方都市活性化の重要な拠点として考え、実際にそれを実行に移すことができるアイデァを蓄積することです。そのため、今回のリサーチでは、実践力を重視しました。縁あって、南陽市赤湯地域の白竜銀河の森づくりプロジェクトの関係者のご協力を得ることができ、テンポラリーな「ぶどう畑のレストラン」を準備し、営業するという社会実験も行いました。この土地は、昔のカルデラ地形を望む高台で、カルデラ湖の名残である美しい白竜湖を望む絶景の地です。古い葡萄畑が耕作放棄によって林となり、長い間使われていませんでした。赤湯地域は良好な温泉や熊野大社、烏帽子山公園などの名所のある豊かな土地ですが、一方で斜面に広がるブドウ畑や雄大なカルデラの景観を楽しむことのできる観光資源に乏しく、「ここにしかない大きな地域資源」がみすみす放置されている状況だと感じました。また、日本の最古のワイナリー地域のひとつでもあり、地元産ワインもこの地オリジナルの大きな魅力です。地域の人々と一緒になってこれらの潜在的な環境の美しさを再発見し、おいしい食事とともに過ごしたひと時は大変貴重なものでした。こうした社会実験の成果を、今後、少しずつ発展させながら実際の「環境レストラン」の開業を目指すのは、このプロジェクトの大きな楽しみです。
Key words
グリーンツーリズム アグリツーリズム 農家民宿 地産地消型レストラン オーベルジュ
オーガニックレストラン コミュニティレストラン
green tourism agri-tourism
