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小坪プロジェクト:ワーク・イン・プログレスのデザイン

逗子市小坪漁港に面した漁村集落のSOHO。かなり特殊な立地である。国道134号線がずっと海際を走る湘南エリアにあって、材木座海岸と逗子海岸を結ぶトンネルが通っている部分で交通がショートカットされ、小坪地域は唯一、国道の通過交通のない静かな海岸線をもつ。134号線を外れて材木座の住宅街を5分ほど走り、小さなトンネルを抜けると逗子マリーナの椰子並木とともに、全く雰囲気の違う静かなエリアが現れる。
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写真:逗子マリーナの公園から小坪漁港の上の斜面につくられた漁村集落を見る
逗子マリーナ、披露山庭園住宅などの開発地域はインフラも充実しているが、敷地のある漁村集落内には細街路しかなく、200件余りの住戸が車のアクセスのない立地となっている。詳しく調べていないので確かではないが、首都圏でここまで歩行者空間だけで成り立っている地区を他に知らない。敷地までは車を降りてから徒歩で100メートルばかり坂道をたどる。

自邸であるため未完成でもとりあえず住めれば良いというスタンスが取れる。敷地には築40年になる古家が残っていた。どこにでもある平凡な在来工法の木造住宅であったが、内部の仕上げを解体して現れた軸組みだけの空間を体験したとたんに愛着が生まれ、過半を保存活用することにした。
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写真:内装を解体した既存棟2階インテリア
増築されコンディションも良くなかった南側部分を建て替えて新しい棟をつくり、新旧二棟が間に半屋外の通り土間を持ちながら並んで建つ構成とした。半分を残し、半分を解体して建てなおすリノベーションであり、結果として究極のローコスト改修を実現した。ただし、未完成。居住開始後も継続して手を入れ続けるつもりであり、ある意味では永遠に完成することがないかも知れない。
「ワーク・イン・プログレス」という言葉は、もともと、現代のライブパフォーマンスやインスタレーション・アートの文脈で使い始められた。ライブを重ねるたびに観衆の反応や技術革新を重ねてアップグレードされていく形式の作品をあらわす。実験的な要素を重視し、発表後も観衆からのフィードバックなどによって作品は修正され、場合によっては最初の作品とは似ても似つかぬものに発展する。作品が常にライブから得られるフィードバック・ループによって柔軟に成長する、インタラクティヴでオープンエンドな形式である。
筆者が共同主催するResponsive Environment東京カテドラルの空間パフォーマンス横浜像の鼻パークのアーバンパフォーマンスもワーク・イン・プログレスの作品である。

いかに小さな建築であっても、都市的なスケールでデザインすることが重要だと考えている。既存のコンテクストを重視し、そこに応答しながら介入していく。空間デザインは常に都市環境のつくりかえ行為(リノベーション)としてあるからだ。
程よくくたびれた湘南の漁村という雰囲気になじまないし、予算にも余裕がないため、このプロジェクトでは早くからデザインや住宅としての機能に完璧性を求めないことにした。ワーク・イン・プログレスのデザイン手法はこうした現実が要請した結果でもある。限られた時間やコストでできることから始め、ぎりぎり住める状態まで持って行って地元の仲間入りをし、とりあえず建物を使い始める。不完全ながらも機能し始めることでワーク・イン・プログレスのデザインは始まり、完璧ではないがそこに建っていることで風景には新しい作用が発生する。デザインは常に発展途上のプロセスであり、終わりがない。

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